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一ノ戸川橋梁

(いちのとがわ きょうりょう)

一ノ戸川橋梁は、福島県喜多方市を流れる一ノ戸川に架かるJR磐越西線の鉄橋です。全長445メートル、高さ24メートルを誇り、1910年(明治43年)の完成当時には「東洋一」と称されるほど壮大な規模を誇った石造りの橋梁です。現在も現役で使用されており、経済産業省の近代化産業遺産に認定されるなど、文化的・建築的価値の高い施設として注目されています。

歴史と概要

完成までの道のり

一ノ戸川橋梁は、1908年に架橋工事が始まり、1910年に岩越線(現・磐越西線)の喜多方~山都間開通に伴い供用が開始されました。一ノ戸川の谷は広く、谷底には水田が広がるほどの地形であったため、16支間に及ぶ長大な鉄橋が建設されることとなりました。当時は日本国内だけでなく、東洋全体でも最大規模を誇る鉄橋として知られ、その存在は鉄道建築史においても大きな意義を持ちました。

構造の特徴

橋梁の構造は、中央部1支間が上路式ボルチモアトラス橋、残り15支間がプレートガーダー橋で構成されています。特にボルチモアトラス橋は現存例が少なく、現役で使用されているものは全国でも数えるほどしかありません。橋脚は地元の宮古地区で採石された花崗岩を積み上げて築かれ、足りない石材は高郷村からトロッコで運ばれるなど、当時の工事は困難を極めました。完成時には地元住民や工事関係者が感極まって涙を流したと伝えられています。

文化遺産としての価値

鉄道文化の象徴

一ノ戸川橋梁は、その美しいフォルムと歴史的価値から「磐越西線鉄道施設群」の一部として2016年に土木学会選奨土木遺産に認定されました。さらに2020年には完成から110年を迎え、改めて地域のシンボルとして注目を集めています。

鉄道ファンに人気の撮影スポット

非電化区間に位置しているため架線柱や電線がなく、列車の姿を遮るものがありません。そのため、「SLばんえつ物語号」が走行する際には絶好の撮影ポイントとなり、全国から鉄道ファンやカメラマンが訪れます。列車が橋を渡る際に響き渡る力強い走行音は、「うつくしまの音30景」にも選ばれています。

幻想的なライトアップ

期間限定の夜景

一ノ戸川橋梁では、期間限定でのライトアップも行われています。歴史を感じさせる石造りの橋が淡い光に浮かび上がる光景は幻想的で、日中とはまた違った美しさを楽しむことができます。訪れる人々を魅了する夜景は、地域の新たな観光資源としても評価されています。

まとめ

一ノ戸川橋梁は、明治時代に築かれた東洋一の規模を誇る石造りの鉄橋として、その歴史と文化的価値を今に伝えています。工事に携わった人々の努力と地域の誇りが詰まった橋梁は、鉄道ファンのみならず多くの旅行者を魅了し続けています。昼間の力強い列車の姿、夜間の幻想的なライトアップと、訪れる時間によって異なる表情を見せる一ノ戸川橋梁を、ぜひ現地で体感してみてください。

Information

名称
一ノ戸川橋梁
(いちのとがわ きょうりょう)

会津・喜多方

福島県