福島県いわき市にある「いわき湯本温泉」は、伊予国道後温泉、摂津国有馬温泉とともに日本の三古泉として知られる歴史ある温泉地です。
1000年以上の歴史を持ち、古くは「佐波古温泉」と呼ばれていました。奈良時代の文献にも記載されており、その長い歴史の中で多くの旅人や湯治客に愛されてきた温泉地です。
中世には戦国大名も多く訪れ、江戸時代には文人墨客も絶えないなど、時代を超えて人々を魅了し続けてきました。
いわき湯本温泉の泉質は、珍しい塩化物泉と硫黄泉が混ざった「塩化物硫黄泉」です。美肌作用や解毒作用、末梢血管の拡張作用など、「美人の湯」として知られています。また、血圧を下げる「心臓の湯」としても効果があり、動脈硬化や高血圧にも良いとされています。さらに、高齢者に適した「熱の湯」でもあり、保温効果が高い特徴もあります。
湯量も豊富で、地下約50メートルから毎分5トンの湧出量があります。源泉かけ流しの天然硫黄泉を誇る旅館も多く存在します。
いわき市は、東北地方の中でも比較的温暖な気候が特徴です。風情豊かな温泉街を散策した後は、小名浜港で水揚げされた新鮮な海の幸を楽しむことができます。中でも、いわき名物の「あんこう鍋」は絶品です。冬には、雪景色を眺めながら温泉を楽しむこともできます。
この温泉はかつて「常磐湯本温泉」と呼ばれていました。その開湯の歴史は古く、奈良時代にまでさかのぼるとされています。伝承によれば、一羽の傷ついた丹頂鶴がこの地の泉に降り立ち、湯に浸かっていたところ、傷口を若夫婦の旅人が洗い流し、鶴は元気に飛び立った後、数日後には鶴が化けた女性が現れ、二人に巻物を授けました。その巻物にはこの湯を開き、天寿を全うするようにとの記述があり、以来「佐波古の湯」が開かれたと言われています。
延長五年の『延喜式神名帳』には、この温泉に鎮座する「磐城郡温泉神社」という名前が記されています。それにちなんで、いつしか「日本三古泉」という言葉が宣伝文句として使われるようになりました。なお、「日本三古湯」という表現が使われる場合は、有馬温泉、道後温泉に加えて白浜温泉が含まれます。また、平安時代には既に「湯本」という地名が使用されており、磐城郡の湯本温泉として知られるようになりました。
鎌倉時代には「三箱の湯」として、信濃御湯、名取御湯と共に三御湯に数えられました。このような経緯から、湯本温泉は神聖な温泉として名を馳せ、その効能も旅人たちに広まり、湯治の名所として発展していきました。江戸時代には陸前浜街道の宿場としても栄えました。
明治時代に入り、石炭採掘が始まると、坑内から多くの温泉が湧き出しました。しかし、これは地下の泉脈が破壊されたことを意味し、1919年には温泉の地表への湧出が止まってしまいました。その後、炭鉱との協議の結果、温泉は1942年に復活することができました。
1966年には常磐ハワイアンセンター(現在のスパリゾートハワイアンズ)がオープンしました。当時は珍しい温泉プールやレジャー施設があり、特にフラダンスショーが目玉となり、常磐湯本温泉の名声を一気に高めました。この施設は「日本人が行ってみたい外国ナンバーワン」とされる「ハワイ」に着想を得て作られ、豊富な常磐湯本温泉の水を利用して室内を暖め、夢の島ハワイをイメージしたリゾート施設となりました。
JR常磐線 湯本駅すぐ
常磐自動車道 いわき湯本ICより約10分