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いわき市暮らしの伝承郷

(くらし でんしょうごう)

江戸時代の茅葺き古民家でめぐる昔の暮らし

福島県いわき市にあるいわき市暮らしの伝承郷は、江戸時代や明治時代の暮らしぶりを再現した古民家や展示施設が立ち並ぶ、日本の伝統文化を体感できる施設です。江戸時代や明治時代などの過去の生活の工夫を学び、現代に生かすことを目的として、1999年に開館し、年間を通して多くの人々に親しまれています。

展示内容と施設の特色

常設展や企画展の展示の他、講座や体験学習も実施しています。また、かつて実際に使われていた民家を移築し、当時の様子を限りなく近く復元した民家ゾーンもあります。これらの古民家は全5棟あり、いずれもいわき市内に江戸時代中期から明治時代前期にかけて建てられたもので、旧樋口家住宅が福島県指定重要文化財に、他の4棟がいわき市有形文化財に指定されています。

施設の意義と目的

急激な社会の変化に伴い、先人たちが日々の暮らしの中で培ってきた生活の様式が忘れ去られようとしています。しかし、それらは長い年月にわたり受け継がれ、現在の生活の基盤となっているものです。いわき市暮らしの伝承郷は、これら先人の生活の知恵や工夫、風習、技術などを将来に伝えていくことを目的として平成11年に設立されました。

民家ゾーンの詳細

園内の民家ゾーンには、いわき市内に残っていた茅葺きの古民家が移築され、建築当初の状態を復元しています。5棟の民家は江戸時代後期から明治時代初期に建てられたもので、全ていわき市有形文化財(旧樋口家は福島県重要文化財)の指定を受けています。民家には自由に入ることができ、板の間や座敷に上がったり、囲炉裏端に座って見学することができます。周囲には田畑や池、広場、雑木林があり、かつての農村の風景を再現し、四季折々の植物も楽しめます。

体験学習の魅力

暮らしの伝承郷では、展示や古民家を「見る」だけでなく、さまざまなことを「体験する」ことによって、先人の優れた知恵や工夫、風習、技術などを学んでいただけるよう工夫しています。ご年配の方には懐かしさを、若い方やお子さんには新鮮さを感じていただける施設です。ご家族やお友達同士で、どうぞゆったりとした時間をお過ごしください。

常設展示室の紹介

いわき市暮らしの伝承郷常設展示室では、「人びとの暮らし」をテーマに、祖先の営みから現代の暮らしまで、さまざまな資料を展示しています。

晩秋の村境

いわき市三和町上市萱(かみいちがや)の村境をモデルに、晩秋の夕景を再現しています。川の音、虫の音、鳥の鳴き声なども聞こえ、当時の村境の雰囲気を体感できます。村境は現実の町や村の境界というより、自分たちの世界の限界を示していたようです。そのため、村境には地蔵様や馬頭観音、供養塔などの石碑や道切りの注連縄(しめなわ)が設けられ、災難が入ってこないようにされていました。

日本の民家と福島の民家

日本各地の民家や福島県の代表的な民家をパネルで紹介しています。伝統的な民家は、建てられた場所の気候や風土に適応した形で建てられ、その中には住む人々の知恵と工夫が表れています。例えば、暑さや寒さをしのぐ炉(ろ)、土壁、茅葺屋根、換気のための煙出し、明かりを取り入れる障子など、多くの工夫が見られます。

暮らしと行事

いわきに残るさまざまな行事や人々の知恵、工夫、昔話などを楽しく紹介しています。代表的な年中行事や日常生活の小さな行事をグラフィックパネルで紹介し、正月やお盆の行事、身近な生活の知恵、言葉や昔話、おばけなどを「暮らしの玉手箱」として展示しています。映像コーナーでは、「ぼくたちの獅子舞」「ふるさとのひびき、じゃんがら」「昔の家と暮らし」の映像を大型スクリーンで楽しむことができます。

暮らしの中の子供たち

江戸時代から現代までの子供たちの暮らしや遊び、学びの変遷をジオラマで紹介しています。

民家の詳細

旧川口家:いわき市指定有形文化財(平成7年4月28日指定)。旧所在地はいわき市内郷御厩町上宿、建築年代は明治時代初期(明治4年・1871年)、面積126.51㎡。この家は代々醤油業を営んでいた商家で、昭和14年に家の向きを東向きから南向きに変えたため、創建当時の細部は不明です。

旧猪狩家:いわき市指定有形文化財(平成8年7月19日指定)。旧所在地は福島県いわき市好間町川中子字五ノ神、建築年代は明治時代初期(明治12年・1879年)、面積116.78㎡。透かし天井の煙出しや風呂場の肥料溜など、特徴的な構造が多く見られます。

旧髙木家:いわき市指定有形文化財(平成9年5月13日指定)。旧所在地は福島県いわき市常磐藤原町田場坂、建築年代は江戸時代後期(嘉永3年・1850年)、面積128.89㎡。商家として利用されていたこの家は、高い床が特徴です。

旧樋口家:福島県指定重要文化財(平成19年4月6日指定)。旧所在地は福島県いわき市遠野町入遠野字中野、建築年代は江戸時代後期、面積100.25㎡。養蚕や和紙の生産を行っていた家で、広間には蚕棚や養蚕道具が展示されています。

旧芳賀家:いわき市指定有形文化財(平成9年5月13日指定)。旧所在地は福島県いわき市田人町旅人字唐沢、建築年代は江戸時代後期、面積116.96㎡。庄屋を務めていた家で、太い木材を使用し、立派な造りが特徴です。

Information

名称
いわき市暮らしの伝承郷
(くらし でんしょうごう)

いわき・相馬

福島県