高湯温泉は、福島県福島市町庭坂(旧国陸奥国、明治以降は岩代国)に位置し、標高750メートルの高地にあります。福島市郊外の西部、吾妻山連峰の中腹に位置するこの温泉街は、400年以上の歴史を持ち、薬効成分が非常に高い全国有数の高濃度硫黄泉かけ流し湯が楽しめる場所として知られています。
福島の観光名所である浄土平および吾妻小富士へ通じる観光道路「磐梯吾妻スカイライン」の入口に温泉街が位置しているため、山岳観光を楽しむ前後に気軽に立ち寄れる癒しスポットとして人気です。高湯温泉郷には10軒の旅館が点在し、温泉街の脇には阿武隈川支流の須川が流れています。山形の白布温泉や蔵王温泉と並び、「奥羽三高湯」と称されることもあります。
この温泉地には10箇所の源泉があり、それぞれ「滝の湯」「熱湯」「仙気の湯」などの名前が付けられています。
高湯温泉の泉質は、全国有数の硫黄成分濃度の高さで知られています。全国の硫黄泉を調査した海軍病院の神林博士は、「高湯の湯は全国一の有効温泉」と評価しました。
泉質: 酸性-含硫黄-アルミニウム・カルシウム-硫酸塩泉(硫化水素型)
高湯温泉は天文年間(1532年-1555年)に発見され、慶長年間(1596年-1615年)には湯治場として広く知られるようになりました。1607年(慶長12年)には宍戸五右衛門と菅野国安が温泉を発見し、それぞれ信夫屋(現在の「共同浴場あったか湯」)と安達屋という旅館を開いたと伝えられています。
1933年(昭和8年)、海軍病院の神林博士により「高湯の湯は全国一の有効温泉」と評価されました。1999年(平成11年)4月20日には、福島市内の土湯温泉と共に国民保養温泉地に指定され、2022年12月8日には地域団体商標に登録されました。
高湯温泉地区の温泉湧出量は毎分2,589リットル、泉温は43.7~49.4℃です。この豊富な湯量は6軒の温泉宿と1軒の共同浴場で使用されています。地域内施設の宿泊者数を基にすると、1人あたり毎分4リットルの湯量を誇ります。
高湯温泉では「山を守ることは湯を守ること」という理念が受け継がれており、自然の恵みである温泉を守るとともに、その温泉を使わせてもらっている山への感謝の気持ちが反映されています。また、源泉かけ流しの温泉管理方法により、温泉の効能を最大限に引き出す努力が続けられています。
最近よく見られる「かけ流し」という表現は、単に自然なままの給湯方法を示すだけでなく、一部循環かけ流しや加水加温かけ流しなどの形態も含まれます。高湯温泉のかけ流しは、源泉から引湯したお湯を浴槽に入れ、入れた分だけ浴槽から排出するという単純な仕組みですが、管理に手間がかかるため実践が難しい方法です。しかし、高湯温泉では本物のお湯を提供するために、この方法にこだわり続けています。
高湯温泉には10箇所の自然湧出の源泉があり、そのうち9つが現在も使用されています。これらの源泉は、温度や湯花の量など微妙な違いがあり、温泉ファンにとっても楽しみの一つとなっています。温泉街の宿泊施設は、この自然流下方式を採用しており、全国でも極めて稀なケースです。
「三日一廻り、三廻り十日」という言葉は、高湯湯治に必要な日数を示し、一廻りで身体を湯にならし、二廻りで身体の悪い部分が取れ、三廻りで調子が改善されるとされています。高湯の底力を感じるためには、少なくとも三廻り、十日間が必要とされています。
高湯に来たら、ゆっくりと湯と向き合うことが重要です。山麓の精気を感じながら、温泉街を散策し、心身を癒すことが高湯温泉の醍醐味です。
高湯温泉の送湯管は主に赤松が使われており、これは木の油分が硫黄泉に適しているためです。明治時代には、赤松の管を使って温泉を送湯していました。
泉質: 酸性・含硫黄(硫化水素型)-アルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉(硫黄泉)(低張性-酸性-高温泉)
近隣地域の人々は昔から高湯温泉を湯治場として利用しており、収穫後に逗留することが年に数度の楽しみとされていました。現在でも、伊達郡の農家の高齢者から、子供の頃に高湯温泉での湯治に連れて行かれたという話を聞くことができます。
江戸時代には、集落ごとに湯治小屋を所有し、年間延べ1万2千人が利用していました。高湯温泉の伝承に基づく入浴法は、他の湯治場と共通点が多く、療養としての入浴法が確立されています。