旧亀岡家住宅は、明治時代に蚕種製造業で財を成した亀岡家が建てた住宅建築です。かつて福島県伊達郡桑折町に所在し、現在は同県伊達市保原町に移築されました。洋風の外観と和風の内装を融合させた独特のデザインが特徴で、日本国の重要文化財に指定されています。
明治37年(1904年)頃、蚕種製造を手掛けた亀岡家によって桑折町に建築されました。昭和61年(1986年)に当時の保原町(現・伊達市の一部)に寄贈され、平成7年(1994年)に伊達市保原総合公園内に移築されました。この建物の外部は洋風ですが、内部は和風の造作になっています。保原歴史文化資料館とともに、伊達市が管理しています。
旧亀岡家住宅は、福島県技手の江川三郎八が設計し、飯坂町の大工小笠原国太郎が施工しました。座敷部は木造2階建てで寄棟造、居住部は木造平屋建てで入母屋造となっています。建物全体は総桟瓦葺で、正面中央に半八角形平面の塔屋状の突出部を持つ黄色を基調とした洋風の外観が特徴です。一方で内部は和風で、座敷を中心に構成され、銘木を多用して細部に技巧が凝らされています。平成28年(2016年)7月25日には、国の重要文化財に指定されました。
主人居間は「けやきの間」と呼ばれる15畳の和室で、細部にわたる装飾が見られます。天井は「折上げ額縁格天井」と呼ばれる格子状の装飾で、欄間には松竹梅の装飾が施されています。
けやきが使われた廊下は、黒く染まった天井の木目が特徴で、わらを燃して炙った杉板が使用されています。日中でも光が差し込みにくいため薄暗い廊下は、明治時代にタイムスリップしたかのような雰囲気を醸し出しています。
まわり階段には曲がったけやきが使われており、手すりの飾りもけやき材をろくろで削ったものです。1本1本の形や太さが異なる手すりは、職人の技術の粋を集めたものです。
アルコーブとは出窓の空間を指し、旧亀岡家住宅の外観の特徴の一つです。出窓の内部には3階へと続く階段があり、階段には傷があり、その部分に柿が彫られています。住宅内には様々な彫り物があり、それらを探しながら見て回るのも興味深いです。
旧亀岡家住宅は、明治37年頃に伊達崎村(現桑折町)の亀岡正元によって建築されました。亀岡正元は蚕種製造で財を成し、後に県会議員や郡会議員を務めるなど政治家としても活躍しました。平成7年には現在の場所に移築復元され、平成28年7月25日に国の重要文化財に指定されました。
旧亀岡家住宅は、福島県技術者と地元大工の協働による独創的な建築物です。外観は洋風でありながら、内部は和風の座敷を中心に構成されています。木材には欅、秋田杉、紫檀、鉄刀木、黒柿、阿武隈川の埋れ木など、貴重な銘木が使用されており、職人の技巧が随所に見られます。これにより、地方的特色を持つ優れた意匠の住宅が完成しました。
旧亀岡家住宅は、福島県伊達地域の蚕種製造の栄華を示す重要な文化財です。この住宅は、外見は洋風で内部は和風という和洋折衷の建築様式が特徴で、当時の建築技術の粋が集められています。また、旧亀岡家住宅は、地方における近代建築の発展を理解する上でも重要な資料となっています。
旧亀岡家住宅は、現在では保原総合公園内の伊達市保原歴史文化資料館に併設されており、多くの人々にその歴史と建築技術の素晴らしさを伝えています。訪れる人々は、約120年前の豪農の生活様式や建築技術に触れ、当時の栄華を感じることができます。