郡山市美術館は、福島県郡山市安原町に位置する美術館で、豊かな自然に囲まれた丘陵地に建てられています。ここからは郡山市街地から安達太良山までを一望でき、自然と芸術が調和する特別な空間として多くの来館者に親しまれています。1992年に竣工し、1994年には第35回BCS建築賞を、さらに1998年には公共建築百選に選ばれるなど、その建築美も高い評価を受けています。
郡山市美術館の最大の特徴は、国内でも珍しいイギリス近代美術の体系的なコレクションを所蔵していることです。ターナーをはじめとするイギリスの巨匠たちの作品は、ここでしか見られない貴重なものです。イギリス美術を中心としながらも、日本の近代美術や、郡山ゆかりの美術家による作品も多く収蔵しています。
岸田劉生をはじめとする日本近代美術の名作も数多く展示されており、洋画や彫刻、工芸作品を通じて日本の近代美術の発展をたどることができます。また、郡山にゆかりのある雪村などの作家の作品も鑑賞でき、地域に根ざした文化的価値を再認識する機会にもなっています。
常設展だけでなく、年に5~6回開催される企画展や海外展も見どころの一つです。古今東西の美術を紹介する多彩な企画展では、国内外から貴重な作品が集められ、訪れるたびに新しい発見があります。また、関連イベントやワークショップも開かれ、子どもから大人まで幅広い層が芸術に触れられる環境が整っています。
郡山市美術館の建物は、自然の景観を尊重して設計されました。建物は丘陵地の低辺部にL字型に配置され、周囲の自然を傷つけないよう配慮されています。美術館のシンボルともいえる曲面の大屋根は、約100メートルにわたって広がり、丘の起伏を表現した伸びやかなデザインが特徴です。屋根はステンレス鋼板の一枚葺きで仕上げられ、光の反射によって美しい表情を見せています。
館内は、エントランスホールから展示ロビーがL字型に広がる構造で、開放感にあふれています。全面に配置されたガラスのカーテンウォールは、外の石庭と館内を一体化させ、自然の光を取り入れながら柔らかい影を演出します。床にはパターンエッチングによるデザインが施され、来館者に美術鑑賞以外の視覚的な楽しみも与えてくれます。
特に印象的なのが「石の広場」と呼ばれる空間です。自然から建築へとつながる中間的な場所として設けられ、外部展示の場としても利用されています。花崗岩や庵治石が組み合わされた広場は、イサム・ノグチの作品制作に携わった職人によって施工され、芸術性と職人技が融合した空間となっています。
所在地:福島県郡山市安原町字大谷地130-2
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
設計は柳澤孝彦+TAK建築・都市計画研究所が担当し、施工は大林組と東洋建設の共同企業体によって行われました。建物はRC造・SRC造で地下1階・地上2階建て。延床面積は6,848㎡におよび、広々とした空間が確保されています。
JR郡山駅西口5番乗り場から「郡山美術館経由東部ニュータウン行き」のバスに乗車し、「郡山市美術館」停留所で下車します。所要時間は約15分です。
JR郡山駅前から美術館通りを経由して約4km、車でおよそ10分ほどで到着します。市街地からも近いため、観光の合間に気軽に訪れることができます。
郡山市美術館は、イギリス近代美術の充実したコレクションを中心に、日本近代美術や郡山ゆかりの作家の作品を楽しめる文化施設です。自然と調和した建築デザイン、充実した展示内容、そして美術館自体が持つ建築的な美しさも大きな魅力となっています。郡山を訪れる際にはぜひ足を運び、芸術と自然が織りなす豊かな時間を体感してみてください。