博物館の成り立ちと歴史
この建物は、1889年(明治22年)に建てられた旧福島県尋常中学校の本館です。県内で唯一の旧制中学校として開設され、福島県の教育史において大きな役割を果たしました。長い歴史の中で数多くの著名人を輩出し、文豪・高山樗牛、文学者・久米正雄、そして世界的歴史学者の朝河貫一などがここで学んでいます。
建物の保存と博物館化
1973年に福島県の指定文化財、1977年には国の重要文化財に指定され、その後、文化庁の指導のもとで半解体修理工事が行われました。1980年には復元工事が完了し、往時の姿を取り戻しました。そして1984年、安積高校創立百周年を記念して「安積歴史博物館」として一般公開され、現在に至ります。
建築様式と美しい外観
旧本館はイタリア・ルネサンス風の木造建築であり、明治期の西洋建築を色濃く反映した貴重な文化財です。中央には豪壮なバルコニー式の玄関を構え、当時「桑野御殿」と称されるほどの威容を誇りました。広大な敷地に堂々と構えるその姿は、今も訪れる人々を圧倒します。
館内の見どころ
- 復元教室:古い木製の机と椅子が並び、明治の学び舎の雰囲気をそのまま体感できます。
- 講堂:2基のシャンデリアが輝く華やかな空間。結婚式やドラマ撮影にも利用されています。
- 廊下:大きな窓から柔らかな光が差し込み、アンティークな雰囲気に包まれます。
こうした空間はカメラ愛好家や映画・テレビのロケ地としても注目を集めています。訪れた際には、歴史ある建物の魅力を背景に写真撮影を楽しむのもおすすめです。
文化財としての価値と日本遺産
安積歴史博物館は、日本遺産「未来を拓いた『一本の水路』」の構成要素にも認定されています。これは、安積疏水の開削によって地域が大きく発展した歴史を物語るもので、当時の教育と社会のつながりを示す象徴的な施設といえるでしょう。
博物館の歩みと出来事
近代から現代までの主な出来事
以下に安積歴史博物館(旧中学校本館)の歩みをまとめます。
- 1884年(明治17年):福島中学校として開校
- 1889年(明治22年):現在地に移転し、現存する本館が完成
- 1948年(昭和23年):新制「福島県立安積高等学校」となる
- 1977年(昭和52年):国の重要文化財に指定
- 1984年(昭和59年):創立百周年を記念し、安積歴史博物館として公開
- 2008年(平成20年):近代化産業遺産に認定
- 2009年(平成21年):NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』のロケ地に使用
- 2011年(平成23年):東日本大震災で被害を受ける
- 2014年(平成26年):グランドオープンし通常公開を再開
利用案内
開館日と時間
博物館は火曜日から日曜日まで開館しており、開館時間は午前10時から午後5時までです。10名以上のグループでの利用には事前予約が必要です。
所在地とアクセス
所在地:〒963-8851 福島県郡山市開成五丁目25番63号
アクセス:東北自動車道「郡山IC」から約5.5km、JR郡山駅からは約3.5km。市内バスを利用する場合は「安積高校」下車すぐです。
観光スポットとしての魅力
安積歴史博物館は、単なる歴史展示施設にとどまらず、郡山市を代表する観光名所としても人気を集めています。館内を歩けば、明治の学び舎にタイムスリップしたような気分を味わえ、教育と文化の歩みを肌で感じられます。さらに、映画やドラマのロケ地としても多く利用されているため、訪れたことがある場所を映像の中で見つける楽しみもあります。
まとめ
安積歴史博物館(旧福島県尋常中学校本館)は、福島県の教育史を物語る象徴的な建造物であり、日本近代建築の貴重な遺産です。その美しい建物と歴史的価値、そして文化的役割は、今もなお人々に感動と学びを与えています。郡山を訪れる際にはぜひ足を運び、明治の息吹を感じるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。