郡山のソウルフードとして知られるクリームボックスは、厚切りの食パンに真っ白なミルク風味のクリームをたっぷり塗った菓子パンです。郡山市民で知らない者はいないほど親しまれており、市内のパン屋さんには必ずと言っていいほど置いてある定番商品です。しかし、県外で見かけることはほとんどありません。
発祥の店「ベーカリー ロミオ」は、1974年(昭和49年)にオープンしました。クリームボックスが誕生したのは1976年(昭和51年)のことです。当時の従業員たちが新商品のアイデアを練っていた際、お客さんに美味しいと喜んでもらえるパンを作ろうと思ったのがきっかけでした。試食したところ、あまりのおいしさにこれを商品化すると若い女性の間で評判となり、その後市内のパン屋さんにも広がって、子どもから大人までみんなに愛される市民グルメに成長したのです。
見た目と味わいは、一辺が15cm、3cmほども厚みのある厚切りの食パンの上に、たっぷりのミルククリームが塗られているのが特徴です。低温熟成させた生地はミルク風味でもっちりふわふわ。上に乗ったクリームもミルク風味が濃厚で、トロッとコクがありながら後味はあっさりしており、甘ったるさがありません。
クリームボックスは、郡山市内の多くのパン屋や学校の購買で販売されており、販売価格はおおむね100円前後です。まれにパン生地が円形の場合もあります。見た目がシンプルで、上から見ると通常の食パンとあまり変わらないため、クリームの上にアーモンドを乗せたり、チョコレートでキャラクターの顔を描いたりしたものも存在します。
郡山市では非常にポピュラーな菓子パンですが、近隣の県や福島県内の他市町村でも販売されることは少なく、郡山市外に出て初めてクリームボックスがローカルフードであることに気づく人も多いです。郡山市のご当地パンとして知られるようになり、2016年4月からはクリームボックスを通じた町おこし事業として、同市のパン店18店舗を巡る「スタンプラリー」が行われています。
2016年5月には、福島県の大型観光企画「アフターDC(デスティネーションキャンペーン)」の開催記念のオリジナル商品としてファミリーマートから東北6県と新潟県の約860店で発売され、福島県のPRに一役買っています。また、郡山市に出店しているポンパドウルが首都圏でもクリームボックスを販売したことなどから、販売地域も拡大しています。
さらに2016年10月から放映されたテレビアニメ作品『フリップフラッパーズ』にはクリームボックスが好きという設定のキャラクターが登場しました。2018年12月には郡山市の酪王乳業の酪王カフェオレとクリームボックスを組み合わせた商品が沖縄県を除く全国のファミリーマートで販売されるなどして、クリームボックスの知名度が高まっています。