田代山湿原は、福島県南会津郡南会津町の南端、栃木県日光市境近くに位置する田代山(標高1971m)の頂上付近にある高層湿原です。尾瀬国立公園の特別保護地区に指定されています。天空に広がる花の楽園として多くの登山客を魅了しています。
田代山のなだらかな頂上部に広がる約25ha、標高約1,900mの高層湿原で、やや下った位置には小規模な小田代湿原もあります。一般には双方を併せて「田代山湿原」と称することが多いです。2007年(平成19年)8月30日、国立公園地域に指定され、尾瀬と合わせて尾瀬国立公園となりました。
田代山湿原は遷移が進んでおり、泥炭の堆積のため、池塘は弘法沼ひとつのみで、ほとんどが草原となっています。湿原全体に木道が整備されており、最奥部の田代山避難小屋(弘法大師堂)からさらに栃木県境となっている稜線を歩く登山道があります。帝釈山まで約1時間の行程です。
代表的な植物群落として、ヒメシャクナゲ、チングルマ、イワカガミ、ワタスゲ、キンコウカ、コバイケイソウなどが挙げられます。小田代湿原は田代山湿原より標高が低いため、花期は全般に一週間ほど早く訪れます。
猿倉登山口は、栃木県日光市栗山地区と福島県湯ノ花温泉を結ぶ栃木県道・福島県道350号栗山舘岩線(田代山林道)にあり、湯ノ花温泉から自動車・タクシー等で約30分の場所に位置します。猿倉登山口からは約2km、約1時間45分の行程で、標高差は約700mです。
田代山は作家・田中澄江が紹介した「花の百名山」にノミネートされています。高山植物が豊富で、キンコウカ、ワタスゲ、イワカガミ、タテヤマリンドウ、ヒメシャクナゲ、モウセンゴケなどが見られます。
春:ミズバショウ、ショウジョウバカマ、リュウキンカなどの花々が咲き誇ります。
夏:ワタスゲ、チングルマ、ニッコウキスゲなどの高山植物が一面に咲き誇ります。
秋:湿原周辺の紅葉を楽しむことができます。
東北百名山、会津百名山、新・うつくしま百名山の田代山は世界的にも稀な台地状の山頂湿原を有する自然の宝庫です。標高1,926mの「山上の楽園」とも呼ばれ、山頂湿原ではワタスゲ、チングルマ、ニッコウキスゲなど約400種にもおよぶ高山植物を楽しむことができます。山頂からは会津駒ケ岳、燧ケ岳、遠方に飯豊連峰、吾妻連峰の雄大な眺望も魅力です。
山頂湿原がまるでプリンのような形に見える田代山は、とても特徴的な山容をしています。尾瀬のはずれに位置する隠れた名山で、ワタスゲやキンコウカ、チングルマの群落が見事です。花の百名山に選ばれているため、花好きには堪らない登山コースです。
「田代(たしろ)」とは田んぼや湿原を意味します。普通、湿原は水の集まる湿ったところにできることが多いのですが、田代山は山のてっぺんに見わたす限りの湿原が広がっています。これは全国的にも珍しい景観です。田代山の湿原は雪や雨による水分と水はけの悪い地層によってもたらされたと言われています。田代山の湿原と森林を空から望むと、まるでプリンのような形をしています。
田代山では昔からさまざまな神事が行われてきました。江戸時代には山頂に田代神社がまつられ、雨乞いなどが行われていました。1912年、真言宗の高僧と地元の神主と剛力で弘法太師の像を山頂にまつりました。その後、弘法大師堂が建てられ、弘法さまと田代大明神は湿原とふもとの村を見守る位置に安置されました。今でも約100年前と変わらない姿で弘法さまが私たちを迎えてくれます。
田代山の山頂湿原には、ハイマツやネズコなどの灌木がとび島のように生えています。その一角に「天狗の庭」と呼ばれる場所があります。その昔、田代山南側の斜面にある鳥居岩と呼ばれる岩の横穴に小天狗が住んでいました。その小天狗はよくこの場所で遊んでおり、山に登ってきた村人を驚かせていたそうです。