田出宇賀神社の由緒
かつて田島一帯は広大な田んぼが広がる地域でした。その中央に小島のように土盛りされた場所があり、そこから泉が湧き出ていました。あるとき、その泉から神が現れ、豊作をもたらしたことから、人々はこの神を宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)と崇め、「田出宇賀大明神」と呼んで祀りました。この伝承は、地域の名前「田島」の由来ともなったとされています。
田出宇賀神社は、以来この地の鎮守として人々に親しまれ、農耕と豊作を祈願する場として大切にされてきました。
田出宇賀神社の祭神
田出宇賀神社には以下の神々が祀られています。
- 宇迦之御魂命
- 天照大日命
- 須佐之男命
- 和久産霊命
これらの神々は五穀豊穣や生命の力、太陽の恵みを象徴する存在であり、地域の暮らしと深く結びついています。
熊野神社の由緒
田出宇賀神社と共に同じ境内に鎮座するのが熊野神社です。その始まりは奈良時代の神亀5年(728年)にさかのぼります。当時、文武天皇の御作とされる三体の神像(伊邪那美命・伊邪那岐命・大日霊女命)が勧請され、祀られたのが起源とされています。
また、慶長8年(1603年)には町内の新町や元町唐松元にあった熊野社が、現在の宮本地区に合祀され、「熊野三社」として祀られるようになったと伝えられています。
熊野神社の祭神
熊野神社には以下の神々が祀られています。
- 伊邪那美命
- 速玉男命
- 事解男命
これらの神々は熊野信仰の中心となる神々であり、死と再生、祓い清め、そして生命の循環を象徴しています。
会津田島祇園祭との関わり
田出宇賀神社と熊野神社の例大祭として、毎年7月22日から24日にかけて行われるのが会津田島祇園祭です。この祭りは国の重要無形民俗文化財に指定されており、千年以上の歴史を持つ由緒正しい祭礼です。豪華な屋台や子供歌舞伎、七行器行列などが行われ、地域の人々にとって欠かせない夏の一大行事となっています。
田出宇賀神社と熊野神社は、この祭りの中心を担う存在であり、地域の信仰と文化を今に伝える大切な場として多くの参拝者や観光客に親しまれています。
まとめ
田出宇賀神社と熊野神社は、南会津町田島の信仰の中心であり、歴史と伝承に彩られた由緒ある神社です。泉から神が現れたという神秘的な伝承や、熊野信仰との融合は、この地ならではの文化を育んできました。そして、毎年開催される会津田島祇園祭を通じて、その伝統は今も力強く息づいています。南会津を訪れる際には、ぜひ両社を参拝し、歴史と信仰に触れてみることをおすすめいたします。