しんごろうは、福島県南会津郡南会津町と下郷町に伝わる郷土料理のひとつです。うるち米を半つきにして団子状にし、竹串に刺して炭火で焼き上げたものに、甘めの味噌とすりつぶしたエゴマを混ぜ合わせた「じゅうねん味噌」を塗って仕上げます。
福島県では多くのエゴマが栽培されており、地域内では「じゅうねん」と呼ばれています。「じゅうねん」は、「十年長生きできる」という言い伝えから名付けられました。このエゴマをすりつぶし、味噌、酒、砂糖、みりんなどを加えて作ったのが「じゅうねんみそ」です。しんごろうは、このじゅうねんみそをつぶしたご飯に塗って焼き上げたものです。
「しんごろう」という名前は、一人の若者の名前から来ています。昔、正月に餅を食べられなかった新五郎という若者が、餅の代わりにご飯をつぶして丸め、じゅうねんみそをつけて焼いたところ、美味しくでき上がり、母親も喜んだことから、この料理に彼の名前がつけられました。このシンプルで優しい味わいの郷土料理は、特に下郷町や南会津町で親しまれています。
しんごろうは通年食べられていますが、新米の収穫を祝う際に特に多く供されます。また、しんごろうとともによく食べられるのが鯨汁です。鯨汁は塩漬けにした鯨の脂身を煮込んだ汁物料理で、収穫後の冬に備えて栄養を取り入れるために食べられていました。
ご飯をすり潰して卵くらいのサイズに丸め、串に刺して囲炉裏で焼きます。両面に焼き目がついたらじゅうねんみそを塗ってさらに焼き、焦げ目がつく程度に仕上げます。白米以外にも、うるち米を使うこともあります。じゅうねんみそを作る際に使う材料は、じゅうねん、味噌、砂糖、みりん、酒などで、材料の配分は家庭や飲食店によって異なり、味わいに個性が出ます。
しんごろうの名前の由来については、料理の生みの親である「新五郎」の名前から来ているという説が最も広く知られています。正月に餅を買えなかった新五郎が、ご飯をつぶして丸め、じゅうねんみそを塗って焼いたところ、それが非常に美味しかったため、村中で評判となり、この地方の郷土料理となりました。また、他の説として、やせた土地で懸命に栽培したお米を年貢で取り立てられた農民が、見た目にコメだと分からないように真っ黒なエゴマ味噌を塗って食べたという起源もあります。
近年まで、新米の収穫後にしんごろうを作り、鯨汁と共に食する習わしがありましたが、現在では四季を問わず会津の特産品として販売されています。
しんごろうの主な伝承地域は、福島県の下郷町と南会津町です。使用される主な食材は、白米とじゅうねんみそです。半つきのご飯を丸めて串に刺し、じゅうねん味噌を塗って炭火で香ばしく焼き上げるというシンプルながらも奥深い料理です。
しんごろうは、じゅうねん味噌の香ばしい香りと、炭火で焼かれたご飯のもちもちした食感が特徴です。この料理は、大内宿などで食べることができます。エゴマの栄養価の高さと、「食べると十年長生きする」という言い伝えにより、健康を願う人々にも愛されています。