南湖公園は、福島県白河市にある都市公園(風致公園)で、1801年に白河藩主・松平定信(楽翁公)が築造した、日本最古の公園とされています。松平定信は「士民共楽」の理念のもと、身分の差を超えて誰もが楽しめる場所とし南湖を造りました。
当時の庭園は城内や大名屋敷内などに造られ、庶民は立ち入ることができませんでしたが、垣根がなく、いつでも誰でも訪れることができる革新的なものでした。
湖畔には吉野桜、松、嵐山の楓などが移植され、春の桜、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々の美しい風景が楽しめます。那須連峰や関山を背景に、200年以上経った今でもその美しさを保ち続けています。
江戸時代初期には大沼と呼ばれていた湿地帯でした。松平定信は藩主就任後、この大沼を改修し、南湖を築造しました。湖水は灌漑用水としても利用され、造成工事は領民の救済事業としての役割も果たしていました。南湖という名称は、唐の詩人・李白の詩「南湖秋水夜煙無」から取り、小峰城の南側に位置することから名付けられました。
湖水面積は17.7ヘクタール、周囲は約2キロメートルで、松、奈良吉野の桜、京都嵐山の楓が植えられています。園内には17の景勝地「南湖十七景」が点在し、散策や茶屋やカフェでの景色の楽しみ方も多彩です。
南湖公園には、松、桜、楓などが四季折々に美しい風景を演出します。特に桜の季節や紅葉の時期、雪景色は見事で、カメラマンや観光客に人気です。公園内には松の木が密集し、観葉植物が豊富で、池には小島が点在しています。
公園の中央には弁天島があり、関山と那須連峰を背景にした景観は特に素晴らしいとされています。南湖十七景と呼ばれる景勝地もあり、それぞれに和漢二つの名称が付けられ、和歌や漢詩が刻まれた石碑が建立されています。
南湖公園は1924年に国の史跡および名勝に指定され、南湖県立自然公園にも指定されています。さらに、2010年には農林水産省のため池百選に選定されました。
南湖神社
南湖公園内には、松平定信を祭神とする南湖神社があります。大正5年(1916年)に創建され、大正11年(1922年)に南湖神社の鎮座祭が執り行われました。毎年春には、湖畔の桜や神社参道沿いの御神木「楽翁桜」が美しく咲き、多くの参拝客で賑わいます。
共楽亭
共楽亭は、享和年間(1801〜1803年)に定信が建てた茶室です。この茶室は、身分の上下なく平等に語り合う「士民共楽」の理念が反映されています。寄棟造の木造木羽葺で、室内は八畳二室からなり、境に幹竹を通しているため十六畳一間にも見えます。
松風亭 蘿月庵
蘿月庵は、寛政年間(1789〜1801年)に白河藩士の三輪権右衛門が茶人であった父・長尾仙鼠のために建立した茶室です。文政6年(1823年)に移築され、大正12年(1923年)に南湖神社に寄贈されました。
翠楽苑
翠楽苑は、平成7年(1995年)に定信の庭園理念を引き継ぎ、日本文化の伝承を体現する施設として作られました。「翠楽苑」の名称は、南湖の緑と湖水に通じる「翠」、そして楽翁の雅号「楽」を合わせたものです。書院造の「松楽亭」では、庭園を眺めながら抹茶と生菓子が楽しめます。
南湖公園周辺には観光施設や飲食店も充実しています。南湖公園周辺で販売されている「南湖だんご」は、餅のように杵で搗いたものが基本で、小豆餡とみたらしの二種類の味付けがあります。それぞれの店で風味が異なるため、食べ比べも楽しめます。近年では、みそ、ずんだ、黒蜜きなこ、ゴマ、桜あんなどのバリエーションも増えています。
その他にも、名物として「そばだんご」も有名です。Lamp Cafeは西白河郡役所として建てられた建物を利用したカフェで、松楽亭では抹茶と生菓子が楽しめます。
南湖公園の池沼には、多様な動植物が生息しています。スイレン、ジュンサイ、ヒシ、ヨシ、ヒルモ、マツモ、ヒラモなどの水生植物や、フナ、コイ、タナゴ、ブラックバス、ブルーギル、ライギョ、ナマズ、メダカなどの魚類が見られます。
また、タニシやドブガイ、マシジミ、ザリガニ、ヌマエビ、サワガニなども生息しています。鳥類では、アヒル、マガモ、カルガモ、カワウ、アオサギ、オシドリなどが見られます。周辺の森林には希少植物のアケボノシュスランが自生しており、市民グループにより保護されています。
南湖公園は、釣りスポットとしても人気があり、シーズン中の休日には多くの釣り人で賑わいます。子供連れの家族が水鳥に餌を与える姿もよく見られますが、鳥インフルエンザ予防のために野鳥への餌付けは禁止されています。
季節ごとの美しい風景と豊かな自然、歴史的な背景を持つ南湖公園は、多くの人々に愛され続けています。
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東北自動車道白河中央スマートICより車で約10分