歴史と由緒
甲子温泉は、州安和尚によって発見されたと伝えられており、古くから人々に愛されてきました。江戸時代には白河藩主・松平定信公がこの湯を好み、別荘を構えるほどでした。松平定信が愛した湯としても知られ、その効能の高さから「子宝の湯」としても語り継がれています。1961年には新たに引湯され、「新甲子温泉」としても発展を遂げました。
名物「大岩風呂」
甲子温泉の象徴ともいえるのが、一軒宿「大黒屋」にある名物風呂、「大岩風呂」です。本館から100段の階段を下り、阿武隈川に架かる橋を渡った先にあり、自然と一体となった湯浴みが楽しめます。深さは約1.2メートルと立って入れるほどで、湯船の中央には「子宝石」が鎮座しています。この石を撫でると子宝に恵まれるという伝説が残り、多くの入浴客が願いを込めて訪れます。
ブナ林に囲まれた絶景の湯
「大岩風呂」はブナの原生林と阿武隈川のせせらぎに包まれた環境にあり、四季の移ろいを肌で感じることができます。新緑の季節には爽やかな空気の中で湯浴みを楽しめ、秋には紅葉が色鮮やかに湯船を彩ります。自然の中で入る湯は、日常を忘れさせる特別な体験を与えてくれるでしょう。
温泉宿「大黒屋」
甲子温泉「大黒屋」は、日光国立公園内の静かな山中に佇む一軒宿です。江戸時代中期には松平定信の別荘として利用されていた建物を離れとして残しており、現在は西郷村の重要文化財にも指定されています。2009年には本館が改築され、伝統と快適さを兼ね備えた滞在が可能となりました。
宿泊と文化財
大黒屋には、歴史を感じさせる木造の別館と、現代的に整えられた本館があります。文化財としての価値を持つ別館では、藩主も愛した温泉文化の名残を感じながら、心穏やかなひとときを過ごせます。
泉質と効能
甲子温泉の泉質はカルシウム・ナトリウム硫酸塩泉で、血行促進や疲労回復に効果があるとされています。また、肌をしっとりと整える美肌効果も期待でき、入浴後は体の芯から温まります。古来より名湯と呼ばれる理由が、この泉質に表れています。
アクセス
甲子温泉へのアクセスは比較的便利で、JR新白河駅から送迎バスで約40分、または東北自動車道・白河ICから車で約40分となっています。阿武隈川の谷底へと下る細い道を進んだ先に温泉宿「大黒屋」が現れ、訪れる人々を出迎えてくれます。
まとめ
甲子温泉は、600年以上の歴史を誇る福島県西郷村の名湯であり、豊かな自然と文化が融合した癒しの温泉地です。名物「大岩風呂」で自然と一体となった湯浴みを楽しみ、松平定信も愛した歴史の香りを感じながら、心身ともに癒される時間を過ごすことができます。四季折々